今日は、人気若手指揮者のグスターボ・ドゥダメルが指揮をするということで、格別な楽しみを胸ににNYフィルのリハーサルコンサートへ出かけました。
ロビーも会場も彼の指揮を楽しみにするお客様でいっぱい!
チケット売り場は、当日券を買いもとめる人たちの長蛇の列が続いています。
なのに、
なにに、
彼は病気でキャンセル。
替わりに知らないおじさんが出てきました。
リハーサルコンサートのほとんどは、お客さまサービスなのか、通して弾いてくれるのに、
ただでさえ現代曲のわかりにくい曲を止めながら指揮するので、ちょっとがっかり。
もう、帰っちゃおうかな〜とお尻がモゾモゾしかかりました。
でも、それは見事に裏切られました。
ブルックナーの交響曲9番を指揮する彼の後姿は、大地にグラウンディングしていて頼もしく、
張り詰めた神経、緊張と弛緩、繊細さとダイナミックを
指揮棒の先からピンポイントで指示します。
ゆるぎのないリーダーシップ。
その様子は客席からもわかり、彼の要求の高さに息を呑みます。
オーケストラもそれに答え、いつもの優等生的な演奏を超えた創造性が引き出され、どんどん熱くなっていくのです。
エネルギーが変わっていくのが目に見えるよう!
ついには、指揮者の要求の一線を越えた演奏へと上り詰めた瞬間!
私は涙が止まりませんでした。
リハーサルでここまで心揺さぶられたのは初めてかもしれません。
超人気指揮者の代役として、代役の指揮をしたのではない。
NYのお客様を喜ばせる演奏をしたのでもなく、
彼は、彼の指揮をやりきったのだと確信しました。
その証拠に、休憩時間を過ぎても帰る人は殆どいませんでした。
よくある代役に対する暖かい拍手ではなく、
驚きと賞賛の拍手は、会場だけでなくオーケストラからも惜しみなく送られていました。
私たちは、従順な演奏を聴きたいのではない。
自分を出し切った演奏を聴きたいのです。
そのためには、指導者が満足するレベルに仕立て上げるのではなく、
演奏者が持てる力を出し切り、満足できること。
今日のNYフィルの演奏は、まさにメンバー全員が満足したのではないでしょうか。
後から、その素晴らしい指揮者の名前を教えてもらいました。
マンフレート・ホーネック。
オーストリアの方でした。
頑固で媚びない気質が彼の高い音楽性を作ったのかもしれません。
グランディングされた渾身の後姿をご覧ください。