「リエ・・元気かしら?」
ドキッ
8階に住むアパートのコミッティの親玉、エレノアから電話がかかってきました。
「メトロポリタン美術館で素敵な催しがあるの。そこでランチでもいかがかしら?」
瞬時に、おばあちゃんは足が悪くてゆ〜〜〜〜っくりしか歩けないのに、美術館に行って大丈夫かしら?
とか、
寒い中出かけて、風邪引かないかしら・・?
などの考えが走りました。
でもこれは、エゴの声。
本当は、英語でしゃべるのが億劫で、英語でのコミュニケーションに自信のない自分のいいわけだと気づきました。
エレノアは、すごく優しいし、教養があって何でも教えてくれる。
自分が歩けるからこそ、誘ってくれたはず。
こうなったら、最敬礼。
ありがたく「ハイッ」と言うしかりません。
そこで、「ハイ、メトロポリタンに行きましょう!」と言ったら、
「そう。じゃあモルガン・ライブラリーに行きましょう」とおっしゃって。
あれ・・・?さすがにミュージアムとライブラリーの違いはわかると思っていたけど。(泣き顔)
なんだかわからないけれど、タクシーに乗ってモルガン・ライブラリーへ向かいました。
エレノアは、タクシーの中でハンドバックをごそごそして、首から下げるカードのようなものを取りだすと、
「ほらね。私はこれがあるから、美術館は全部無料なのよ」とニッコリ。
え?シルバーパス???
「私は、自然史博物館でボランティアをやっているからね」
ああ、言わなくて良かったと胸をなでおろします。
それにしても、すごいです。
ゆ〜〜〜〜っくりしか歩けないそのお見足で???
「すごいです。エレノア。お元気!」
「ありがと。そうそう、来週から2週間ほど、ちょっとインドへ行ってくるわ。3月はパリに行くし、姪も遊びに来るし。
そ・う・ね。・・・・・4月。4月になったら、電車に乗ってNJの美術館に行きましょう!」
「へ???私と?」
「ええ。もちろんよ〜〜」
エネルギーが必要なのは私の方です。
エレノアおばあちゃんは、本当に優しいのです。
人生50年で、こんなに私を甘やかしてくれたのは、片山コーチとエレノアおばあちゃんの2人しかいません。
「リエの英語は、本当に進歩しているわ。本当よ」 (ガーーーーー赤面)
「私ばかり、話していない?」
「わからないことがあったら、何でも聞いてね」
「何が食べたいの?」
・・と、まるで小さい子に接するように可愛がってくださいます。
エレノアは顔を寄せて、「リエのNYでの生活がうまくいって本当にうれしいわ」とささやきます。
でも、すぐに大きな声で「何かあったら、ただじゃおかないから、私に言うのよ」
ああ、びっくりした!!!
もう、怖すぎます。
それにエレノアは、シニカルです。
レストランでメニューを見ながら「フン、ろくなものがないけど。ま!いいでしょう」(大きな声で言いますし)
美術館のツアーの先生が、長々説明していると、
「ほれみてごらん。あんな説明じゃあ、みんな退屈して、眠ってしまいそうだよ」(またまた大きな声で)
などと言うので、私はビクビクです。
でも、すぐにとろける笑顔で、
「さあ、リエ。あの邪魔なグループがいなくなったら、ゆっくり見ましょう。ディケンソンについては、私は詳しいのよ」
ますます、大きな声で言うのです。
だから、私はドキドキするのですよ〜〜〜
ランチの間も、エレノアのゴージャスで本音バリバリの人間臭い人生物語をたっぷり聞いて、面白かった〜。
まるで3日間過ごしたぐらいの充実の一日でした。